梵字の起源となった文字の一つにブラーフミー文字があります。紀元前三世紀頃に使われたブラーフミー文字は、後に多くの派生型文字を生み出しましたが、六世紀頃に使われていたシッダマートリカー文字もその一つ。当時記された経典の多くがシッダマートリカー文字で書かれていましたが、経典はやがて中国へ伝わることになります。
七世紀頃の中国(唐)。インドから伝わった経典が漢訳されましたが、シッダマートリカー文字で記されていたものが数多くありました。漢訳されたシッダマートリカー文字は「悉曇文字」と呼ばれ、現在まで続くものとなりますが、これが私たちの知る梵字と言ってよいでしょう。
不思議な形をした梵字ですが、その中には多くの意味が込められています。ひと言では言い表せない、仏の悟りの世界をが象徴的に表現されたものが梵字なのです。密教ではこれを種子(しゅじ)といい、神秘的な力を持つ呪文「真言」を表すものとして、とても大切にされています。
数えきれない悟りの真理を含んだ梵字は、まさに仏さまそのもの。心を込めた梵字には神秘的な力が宿るでしょう。